【 私の研究 】



ワークショップデザインにおける熟達と実践家育成への視座



 ワークショップとは、もともとは「作業場」を意味する英語でしたが、ここ数十年の間に、学びのための新しい方法として実践が行われるようになりました。中野民夫「ワークショップ」(岩波新書)によれば、ワークショップとは「先生や講師から一方的に話を聞くのではなく、参加者が主体的に議論に参加したり、言葉だけでなくからだやこころを使って体験したり、相互に刺激しあい学びあう、グループによる学びと創造の方法」と定義されています。



 この手法の使われる領域は現在多岐に渡っており、非常に注目されています。しかしながら、実践家の育成に関する研究はあまり行われていません。そこで、 実践家を育てるための方法を検討するため、ワークショップ実践家の専門性というものがあるとすればそれは何か、その専門性はいかにして獲得しうるのか、について考えるというのが、私が取り組んでいる研究課題です。



 これまで私は、ワークショップ実践家のデザインにおける熟達過程に関する実証研究を行ってきました。これらは『学習を目的としたワークショップのデザイン過程に関する研究』『ワークショップ実践家のデザインにおける熟達過程 デザインの方法における変容の契機に着目して』という論文にまとめてあります。



 これら熟達化研究の知見を踏まえ、「ワークショップを実践する人とは一体どのような人なのか」という問いを持って、実践家特有の実践観について迫る調査(『ワークショップ実践家はその専門性をどのように認識しているか:インタビュー調査と質問紙調査による検討』)も行いました。



 さらに、Schönの主張や近接する他専門職の専門性に関する知見を参照しつつ、これまで行ってきた熟達化研究に対して再考察を行いました。その結果、ワークショップ実践家を育成するために必要なことは


(1) 個人レベルの実践論の構築

(2) 専門性に対する社会的認知の向上

(3) デザインモデルの可視化と共有

(4) 学びの原風景に対する内省の支援

(5) 実践家のネットワーク形成とその拡張

の5項目であると考えられます。



 実践家育成のためには、ワークショップデザインにおける熟達化の段階に応じた支援が要となると考えられます。ワークショップ実践家の育成に向け、今後は実践家が同質性を越えた協働を通じ学び合える環境の構築が必要となると思われます。本研究の結果から、ワークショップ実践家が育つ場づくりに対し、少しでも有用な提案ができたら良いな、と思っています。